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「減災どこでも理科実験パッケージ」~被災地でもリモートでも使える理科教材で、途切れない科学教育を進める~

お茶の水女子大学サイエンス&エデュケーション研究所

実行中

更新日:2022.10.06

被災地では教室や教材は失われ、子どもたちは理科実験授業を受けることができません。そこで、お茶の水女子大学サイエンス&エデュケーション研究所では、いつでもどんな場所でも実験できるコンパクトな「減災どこでも理科実験パッケージ」を開発しました。これはコロナ禍において、休校期間中の理科教材としても注目を集めています。

きっかけは、東日本大震災でした。震災後、被災地の理科教育の悲惨な状況を知って衝撃を受け、手軽に入手できる材料で作成できる、コンパクトな理科実験パッケージの必要性を痛感しました。

2016年度からは小学校3年から中学校3年までの学習指導要領の単元に対応する実験教材を開発し、熊本地震や西日本豪雨や北海道胆振東部地震、令和元年台風19号の被災地にも足を運び、理科教育を支援してきました。

教材の材料や作り方は、「お茶の水女子大学 理科教材データベース」に公開しております。

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アクション詳細

目指す社会のあり方、ビジョン

サイエンス&エデュケーション研究所の活動目的は、理科教育と、科学の感動を分かち合える科学コミュニケーションの振興です。大学教員が小・中学校や高校に出向いて頻繁に授業を行うのは難しいので、全国の理科の先生に科学コミュニケーションの担い手として活躍してもらおうと、さまざまなプログラムを展開しています。

また、いつでもどんな場所でも実験できるように、手軽な材料で、簡単に理科実験できる理科教材の開発に取り組んできました。例えば、タブレット顕微鏡は、専用レンズプレートや100円ショップでも購入できるマクロレンズなどをタブレットに装着することで顕微鏡に早変わりするもので、プランクトンなどの生物や結晶成長の様子などを観察することができ、子どもたちにも人気です。

アプローチの方法

簡単に作れる理科教材をいくつかご紹介しましょう。

カラフルな磁界観察ケース

カラータイ(袋の口をとめるビニール付の針金。100円ショップなどで入手可能)をハサミで短く切り刻み、シャーレなどの透明な容器に入れて容器のふたをセロハンテープでとめます。磁石を近づけると、カラータイが磁力線に沿ってキラキラと連なり、磁界が観察できます。気分が落ち込んだ被災地の子どもたちにも、華やかな教材を届けることができます。


カラータイを切って作った磁界観察ケース

回路カード(マグネット版)

ハガキサイズの金属シート(表面絶縁)に銅箔(どうはく)テープ貼った台紙です。この回路カードはどことどこがつながっているのか見た目にもわかりやすく、豆電球、モーター、コンデンサー、プログラミング部品などさまざまな部品と組み合わせ、小学3年生から中学2年生まで幅広い学習が可能です。被災地の狭い仮設教室やコロナの自宅学習においても効果的に学習できます。もちろん通常の授業でもぜひ使っていただきたい教材です。


回路カードと主な部品(SEC提供)

3Dプリンターによる地域の立体地形

3Dプリンターによる地域の立体地形は、3Dプリンターで打ちだした近隣の地形を紙粘土で個人用に複製して、想定される危険について書き込みながら学ぶことができます。これは減災授業に適しています。


3D
プリンターで出力された地形を鋳型として作った紙粘土の立体模型

これまでの活動実績

被災地であった岩手県・宮古市・山田町・大槌町・釜石市・大船渡市、宮城県気仙沼市、熊本県益城町・甲佐町、北海道安平町・むかわ町での教育支援と、今後に災害が懸念されている高知県宿毛市、和歌山大学や、横浜国立大学の14地域・団体と相互協力に関する連携協定を締結し、被災地支援と減災活動を続けてきました(表)。

◆災害支援と地域連携

2011.9-
岩手県沿岸部を中心に、理科教育支援・連携を開始

2012.7-2016.3
岩手県、野田村、宮古市、山田町、大槌町、 釜石市、大船渡市と相互協力に関する連携協定を締結(2018.3に岩手県、宮古市、山田町、大槌町、 釜石市、大船渡市、宮城県気仙沼市と更新)

2016.4-
平成28年熊本地震の被災地に理科教育支援・連携を開始

2016.7
高知県宿毛市と相互協力に関する連携協定を締結

2017.9
熊本県益城町・甲佐町と相互協力に関する連携協定を締結

2018.4
和歌山大学と相互協力に関する連携協定を締結

2018.8-
平成30年7月豪雨の被災地に理科教育支援・連携を開始

2018.9-
平成30年北海道胆振東部地震の被災地に理科教育支援・連携を開始

2019.10
北海道安平町と相互協力に関する連携協定を締結

2019.10-
令和元年台風19号の被災地に理科教育支援・連携を開始

2020.7
北海道むかわ町と相互協力に関する連携協定を締結

2021.11
横浜国立大学と相互協力に関する連携協定を締結

今後のマイルストーン

「減災どこでも理科実験パッケージ」は、普通教室や被災地の仮設教室で用いることができる教材です。これらをさらに改善して、学校に出てくることができない子どもたちや、感染症拡大時での自宅学習においても、効果的に使用できるように開発することと、全国の学校で活用していただくことが目標です。

必要なリソースや提案したいこと

災害発生時に「減災どこでも理科実験パッケージ」を届けるための配送システム構築と、被災している児童生徒数の「減災どこでも理科実験パッケージ」を短期間で作成することができる資金が必要です。ぜひ、連携いただきたくお願いいたします。

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