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地球温暖化による海面水位上昇量を予測

熊本県立天草高等学校 科学部 海水準班

アイディア段階

更新日:2021.11.16

2017年から、私たちは、上天草市で採取された地層に含まれる過去の珪藻と花粉を含むボーリングコア試料を分析する研究を実施しています。珪藻(けいそう)の分析からは海水面高度などを、また花粉の分析からは気温や降水量を推測しています。この分析結果から、気温が1度上昇した時の海面上昇量を特定し、これにIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)が公表した気温上昇予測値を合わせて、未来の海水面を推定しました。

また、測定や研究を進めるにあたり、東京大学や熊本大学、地元博物館や企業など外部機関と連携しました。さらに、小中学生に向けた分析体験会の実施や他県の高校との連携により、農業や漁業など地場産業への影響を明らかにし、地域社会における海面上昇の課題の共有と活動の連携を進めています。

キーワード

アクション詳細

目指す社会のあり方、ビジョン

地球温暖化が引き起こす海面水位上昇の程度には地域差があり、具体的な対策を立てるためには、地域ごとの上昇値を推定する必要があります。私たちは、天草地方における海面上昇による浸水被害のリスクや、海面上昇が及ぼす地域社会や地場産業への影響を明らかにすることで、地球温暖化を自分たちの問題ととらえ、積極的に研究を広めようと考えました。

現状とビジョンのギャップ、課題の構造

近年、地球温暖化が引き起こす海面水位の上昇が問題視され、太平洋の島国の中には水没するところが出てくるのではないかと心配されています。海面水位上昇は日本の沿岸地域にも及ぶ可能性があり、市街地のほとんどが海に面した標高の低いところにある熊本県の天草地方では、浸水被害が出る可能性があります。そのため、天草地方における未来の海面上昇が農業や漁業などの地場産業へどのように影響するかを共有し、地域社会の課題として連携して解決に取り組む必要がありました。

アプローチの方法

植物はそれぞれに適した温度の地域に自生しており、地層の中にはその花粉の化石が含まれています。年代が特定できている地層に含まれる花粉の種類を特定すれば、その年代の植生が分かり、ひいては気温を推測することができます。

私たちは、熊本県立天草高等学校が「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)支援事業」 の指定を受けた2017年から、上天草市で採取された地層に含まれる過去の植物プランクトン(珪藻)と花粉を含むボーリングコア試料の分析を継続して実施し、珪藻から海水面高度などを、また、花粉から気温や降水量を推測しています。

このような測定や研究を進めるにあたり、東京大学や熊本大学、地元博物館や企業など外部機関と連携しました。

*スーパーサイエンスハイスクール(SSH)支援事業:理数系教育に重点を置いた教育課程等に関する研究開発を行う文部科学省の事業。将来国際的に活躍し得る科学技術人材等の育成を図ることを目指しており、2019年度は全国で212校が指定されています。

これまでの活動実績

天草地方において気温が1度上昇した時の海面上昇値を推定するために、上天草市と天草市でのボーリングによって得られた円柱状の土壌試料「ボーリングコア」から珪藻と花粉を採取し、分析を行いました。珪藻の中には、海(干潟)であったことを示す指標となる「Tryblionella granulata」が含まれています。この有無を見ることで海水面高度等が分かります。また、花粉の種類とそれぞれの数を調べると気温や降水量を推測できます。この分析結果から、気温が1度上昇した時の海面上昇量を特定し、これにIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)が公表した気温上昇予測値を合わせることで、50年後には最大で24cm海面が上昇すると予測しました。

この研究から明らかになった未来および災害時の浸水被害のリスクを、地域に共有しました。また、小中学生に向けた分析体験会を実施する、天草の海の魅力を発信する住民グループと共同研究を行う、他の地域の高校生に共同研究を持ち掛けるなど、研究の輪を広げています。

この研究は高く評価され、「つくばScience Edge 2019」という科学アイデアコンテストで「探求指向賞」を受賞しました。また、海面上昇が地場産業に及ぼす影響を訴え、自治体や地域住民を巻き込んで課題の解決を目指している姿勢も高く評価され、「STI for SDGs」アワード「次世代賞」を受賞しています。

▼干潟でハンドボーリングを試みる

▼ボーリングコアから珪藻と花粉を分析

▼市役所付近の堤防の写真に、大潮の満潮時の潮位(青)、50年後の海水面(オレンジ)、大型台風時の高潮による海水面(黄色)を重ねたもの

 

今後のマイルストーン

地球温暖化は自分たちに関わってくる問題です。高校生の私たちが海面水位上昇の研究をすることで、その問題の重要性が伝わりやすくなると思っています。将来社会に出て問題を解決していかないといけないのは私たちの世代であり、それを受け継いでくれるのは次世代です。次世代につなぐために、自校や地域の小学校の文化祭で、珪藻を顕微鏡で観察するためのプレパラート作り体験会などを実施し、小中学生たちに研究の面白さを伝えようとしています。

▼天草高校の文化祭でのプレパラート作り体験会

必要なリソースや提案したいこと

ボーリングコアを提供してもらうために問い合わせた地元の会社はいずれも、突然の電話に快く対応してくれた上に活動への応援の言葉をかけてくれました。この経験は、「地域貢献をしたい、しなければならない」という意志につながりました。

メッセージ

私たちが行動を起こし、地球温暖化を解決しなければなりません。未来のために、今できることがあります。皆さんも、一緒に研究をしましょう。

▼海面水位上昇量の予測に取り組んだ熊本県立天草高等学校科学部の4

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