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汚水処理の持続性向上に向けた挑戦(高知発産官学の技術開発)

高知大学

実行中

更新日:2021.11.16

反応タンク内の2か所に設置した溶存酸素(Dissolved Oxygen :DO)濃度計を用いて、送風量と循環流速を自動制御する汚水処理新技術「オキシデーションディッチ法における二点DO制御システム」を研究開発しました。

香南市野市浄化センターでの実証では、電力を3分の1、処理時間を半分に減少し、処理コストも削減できています。この結果を踏まえて、香南市内の2カ所で本技術を導入したほか、さらに他の自治体へも水平展開を行っています。これまでに香南市を含む9か所の下水処理場で導入決定され、うち7か所の下水処理場で処理を開始しています(2021年10月現在)。人口減少が進む地方都市における汚水処理の持続性を向上させる、この基盤技術は、産官学の連携によって全国での普及に向けて前進しています。

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アクション詳細

目指す社会のあり方、ビジョン

高知県は汚水処理人口普及率が全国ワースト3位です。人口減少や厳しい財政状況にも直面しており、地域の都市基盤としての汚水処理施設の普及と持続性向上が地域課題です。

現状とビジョンのギャップ、課題の構造

通常、汚水処理場では水槽の微生物で汚れを分解しています。下水に空気を送り込むことで微生物の働きが促されますが、空気を送る量の最適化ができていませんでした。

アプローチの方法

新しい汚水処理技術では、無駄な空気を送らないような工夫を施しました。具体的には、反応タンクの2カ所に設置した溶存酸素濃度計を用いて、一方で空気を送る量を、もう一方で水を回す流速をコントロールすることで、好気ゾーンと無酸素ゾーンを作り出し、水路内の溶存酸素濃度の勾配が一定となるよう最適化を図りました(図参照)。

これにより、実験では、今まで24時間かかっていた汚水処理が最短で12時間でできるようになりました。つまり、同じ汚水処理場で倍の汚水処理ができるわけです。この成果によって、人口が減少する地域で汚水処理場の統廃合をしても、効率よい汚水処理が期待できるようになりました。

▼オキシデーションディッチ法における二点DO制御システムのしくみ

▼基礎研究から実証実験への展開

 

これまでの活動実績

高知大学の基礎研究をもとに産官学(高知大学、香南市、高知県、前澤工業、日本下水道事業団)の連携により開発・展開が進められました。香南市野市浄化センターでの実証では、電力を3分の1、処理時間を半分に減少し、処理コストも削減できています。

この成果は、2019年度「STI for SDGs」アワード「優秀賞」、2015(平成27)年度 第8回国土交通大臣賞「循環のみち下水道賞」グランプリ、2015(平成27)年度日本水環境学会技術賞を受賞するとともに、2021年度には第47回優秀環境装置表彰経済産業大臣賞を受賞しています。

▼香南市の下水処理場

今後のマイルストーン

香南市野市浄化センターでの実証結果を踏まえて、10カ所の処理場を2カ所に統合する計画を策定し、その実現に向けて、香南市内の2カ所(野市浄化センターと夜須浄化センター)で本技術を導入したほか、さらに他の自治体へも水平展開を行っています。人口減少が進む地方都市における汚水処理の持続性を向上させる、この基盤技術は、産官学の連携によって全国普及へと進んでいます。

▼香南市処理区統合計画

必要なリソースや提案したいこと

地道な研究で確立された基盤技術を、産官学の共創により実用化につなげ、汚水処理能力の向上、持続可能なまちづくりを実現した事例です。また、開発された新技術の成果が既に実証されており、日本各地への展開も開始されていることから、科学技術イノベーションの活用、展開性においても評価されています。

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