学術-メディア連携により東日本大震災の教訓を他地域・次世代へ継承

東北大学災害科学国際研究所(IRIDeS)
アクション詳細
目指す社会のあり方、ビジョン
第3回国連防災世界会議で策定された「仙台防災枠組 2015-2030」の重要目標である、「災害による死者数・損害額を大幅に削減」に向け、学術-メディア連携を主軸に、市民・自治体・防災関係者等のステークホルダーと協働します。東日本大震災に関する研究成果および教訓を、今後大きな津波災害が起こりうる他地域(南海トラフ巨大地震想定被害域含む)および次世代と共有し、防災力の向上を図ります。
現状とビジョンのギャップ、課題の構造
震災時に学術界および学術知見の社会発信が混乱し、社会の研究者への信頼が低下してしまったことを受け、研究者およびメディア関係者の社会発信の変容を目指しました。課題解決に向けて、既存の「みやぎ防災・減災円卓会議」、「メディア懇話会」、「世界防災フォーラム」をさらに発展させ、日本の学術-メディア連携のプロトタイプ構築や、主体的に防災について考える機会につなげることとしました。
アプローチの方法
科学技術振興機構(JST)科学技術コミュニケーション推進事業「問題解決型科学技術コミュニケーション支援」平成28年度採択企画として、学術-メディア連携のプロトタイプ構築を目指しました。具体的には、災害研究者には「より積極的な社会発信」を、メディア関係者には「より効果的な学術知見の社会発信」を、それぞれ働きかけました。また、東北内外(南海トラフ巨大地震想定被害域等)の、特に若い世代と震災の知見を共有し、主体的に防災について考える意識を醸成することに努めました。
これまでの活動実績
第一に、学術-メディア連携活動を日常的、定期的な活動として定着させました。具体的には、ハワイ世界津波の日プレイベント、定期的なメディア懇話会、学術-メディア東北被災地合宿、サイエンス・アゴラでの本企画紹介、朝日小学生新聞における記事連載やワークショップの開催、世界防災フォーラム等を実施しました。
2017年11月に東北大学で開催した世界防災フォーラム前日祭の告知媒体
第二に、学術-メディア連携において、「災害記憶の継承」「不確実な科学知見の発信」「有事の際、自分で判断し、主体的に行動できる市民を育成するには」などの課題を検討しました。
第三に、南海トラフ巨大地震被害想定域(高知等)やインドネシア・アチェなどの関係者と交流・連携活動を行いました。海外との比較を通じ、日本の現状や東北の復興状況を理解するためには、「工学技術の防災への組み込みと地域コミュニティの弱体化」「各領域の専門分化に伴った防災活動の行政・専門家領域への移行」など、日本の文脈を考慮する必要性が示唆されました。
東南アジア3 国の学術-メディア関係者とのパネルディスカッション
総まとめイベントの様子
第四に、2017(平成29)年度から、朝日学生新聞社との共同企画を通じて、研究者が次世代(小学生)と直接連携して社会発信する活動を実施しました。小学生記者による東北被災地巡検・研究者取材などを行い、次世代との継続的な連携につなげています。
今後のマイルストーン
企画開始前、輪郭ができつつあった学術-メディア連携活動は、JSTによる2016年7月1日から2019年3月31日までの3 年間の支援を得て、実効性のある連携体に成長しました。企画終了後も引き続き、「仙台防災枠組 2015-2030」の根幹にある「災害による死者数・損害額を大幅に削減する」という目標に向け、防災力を向上させる活動を進めていく予定です。今後は、学術-メディア連携活動にあたっての重要テーマの1つに、「災害弱者を取り残さないためにはいかにすべきか」も加え、SDGs の達成も、あわせて目指していきたいと考えています。
アクションリーダー プロフィール
- 東北大学災害科学国際研究所(IRIDeS)
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