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高校生が研究開発したサバ缶がJAXAの宇宙食として認証

福井県立若狭高等学校

実行中

更新日:2021.10.01

2018年11月、私たち福井県立若狭高等学校が研究開発したサバの缶詰(サバ缶)が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)から、宇宙食としての認証(宇宙日本食認証基準)を受けました。これは、高校生が開発した宇宙食としては初めてのことです。学校が所在する福井県の小浜はサバが有名で、昔からサバなどの物資が京都に運ばれた道は「鯖街道」の名で親しまれてきました。地域の特産品を国際宇宙ステーションに搭乗する国内外の宇宙飛行士へ提供する『宇宙日本食サバ缶プロジェクト』は、「小浜の優れた水産加工技術を世界に伝えたい」という生徒たちの思いから始まっています。

キーワード

アクション詳細

目指す社会のあり方、ビジョン

課題設定能力の育成という教育活動を通じて宇宙食開発に挑む中で、食の安全性・衛生管理や地域資源の活用を目指しました。

現状とビジョンのギャップ、課題の構造

JAXAが定める宇宙食としての認証(宇宙日本食認証基準)を満たすためには、製造方法の試行錯誤が必要でした。また、搭乗する宇宙飛行士に支持される味や、宇宙食に適した加工も重要でした。

アプローチの方法

福井県立若狭高等学校海洋科学科(以下:若狭高校)の前身、小浜水産高校では、併設されたサバ缶製造の実習工場で年間1万個ほどのサバ缶が製造されていました。同校では、高度な食品衛生管理技術を学ぶ授業の一環として、2006年に衛生管理の世界基準であるHACCP(ハサップ)を取得しています。HACCPは米国航空宇宙局(NASA)などが宇宙食や食の安全のために開発した衛生基準です。2013年に小浜水産高校と「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)支援事業」 指定校であった若狭高校が統合したことを機に「HACCP基準の衛生管理の基で製造したサバ缶なら宇宙に飛ばせるのでは?」と生徒たちが考え、SSH事業の課題研究としてサバ缶を宇宙食にする挑戦を始めました。

*スーパーサイエンスハイスクール(SSH)支援事業:理数系教育に重点を置いた教育課程等に関する研究開発を行う文部科学省の事業。将来国際的に活躍し得る科学技術人材等の育成を図ることを目指しており、2019年度は全国で212校が指定されています。

▼徹底した衛生管理により、清潔感あふれるサバ缶製造実習工場。

これまでの活動実績

宇宙食として認証されるためには、HACCPで求められる製造工程の基準のみならず、栄養成分、保存条件、味などの点で、JAXAが定める宇宙日本食認証基準をクリアしなければなりません。特に、サバ缶のように汁を含む食品は「とろみのある食品」として、宇宙で汁が飛び散って機械などを故障させないように、粘度の基準が設けられています。若狭高校には粘度を測る機器がなかったため、福井県立大学海洋生物資源学部を訪れ、測定器を使用させてもらいました。

1つ1つ課題を解決した結果、201811月、若狭高校のサバ缶はJAXAから宇宙日本食に認証されました。しかし、実際に宇宙に持って行ってもらうためには、搭乗する宇宙飛行士に持ち込みを希望してもらうことが最も重要だと考え、金井宣茂宇宙飛行士らにサバ缶を試食してもらいました。すると「宇宙では味覚の感度が弱くなるので、2倍くらい濃い味付けがいい。家庭の味も恋しくなる」という要望があり、改善に取り組みました。味を濃くするために、水、しょうゆ、砂糖の比率を変えた4つのパターンの調味液を作成しました。「家庭的な味」については自分たちで仮説を立て、「甘み」と定義し、カロリーを調整しながら自分たちの舌で味を確かめました。その結果、砂糖としょうゆの比率をほぼ同程度にすれば味のバランスが良くなり、家庭の味に近づくことを突き止めています。

▼ 濃い味付けにするために水、しょうゆ、砂糖の比率を変えた調味液を作って食べ比べ、ベストな味を導き出しました。

▼ 細かく数値が書き込まれた実験ノート。

また、別の宇宙飛行士からは、「宇宙で食事をするときはスプーンしか使わない。スプーンで食べやすい柔らかさにして欲しい」との要望もありました。身を柔らかくするために、地元の小浜市田烏地区で養殖されている「よっぱらいサバ」という、えさに酒かすを混ぜて養殖した、とろけるような食感のサバにも着目しました。

今後のマイルストーン

高校生がつくった宇宙日本食は、他に例がありません。私たち生徒は、認証後も自分たちで課題を見つけ、サバ缶が宇宙に飛ぶ日に向けて、13年にわたり先輩から後輩へと引き継ぎながら、さらなる改良に取り組み続けています。

必要なリソースや提案したいこと

ただ単においしいものを作れば良いというわけではありません。小浜水産高校時代から培ってきた水産加工技術と、SSH支援事業を通じて養われた科学的知見の両方があって、初めて、JAXAの認証基準をクリアする宇宙日本食サバ缶が完成したと思っています。探究活動は教室の中に留まりません。地元の養殖場へ出かけ、そこで働く水産業の方と直接関わり、魚の処理方法も体験しながら効果を科学的に分析することを目指しています。

▼ JAXA認証の宇宙日本食となったサバ缶。

私たちの学校では、事象の背景や現状を分析し、科学的根拠をもって仮説を立てる課題設定能力の育成に力を入れています。そこで重視しているのが、現象を数値化する定式化と、地域貢献の視点です。なんとなくの勘ではなく、数値に基づき課題を解決していくことを徹底しています。そして、その結果、いかに地域に貢献するかも大切な評価ポイントです。この宇宙日本食サバ缶も、毎年1つ1つ課題を解決しながら改善してきました。

▼ サバ缶を持って、種子島宇宙センターを訪問した若狭高校の生徒たち。

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  • 福井県立若狭高等学校

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